CES - Consumer Electronics Show が今年もはじまりましたね!
2016年にCESを取材した時のレポートがありましたので公開します。CESとはどういった見本市なのか?これから初めて参加される方にも、その規模感などをお伝えできればと思います。
新年にアメリカで発表されるスマート・デバイスの取材。そういった依頼を受けて、アメリカ・ネバダ州ラスベガスで開催される、世界最大の家電見本市、 CESに行ってきました。
CES の開催は今年で49年目。初開催の1967年以来、さまざまな新製品がこのイベントで発表されてきました。過去にはビデオテープレコーダー(1970年)、ビデオカメラ、CDプレーヤー(1981年)ファミコン(1985年)からブルーレイまで、数多くの画期的な新製品が世界に先駆けてこのCESでお披露目されてきたんですね。各メーカーも新製品の発表をこのCESのタイミングに合わせてくるとあって、今年は何が登場するか、メディアのみならず世界中の注目を集めているイベントなんです。
2016年のCESの一般展示は1月6日〜9日までの4日間開催されました。前年よりも大幅に拡張して、2,400万平方フィートの展示スペースに、世界中から3,600社の出店が集まったとのこと。これ感覚的にどれくらいの広さかというと、たとえば東京で展示会というとモーターショーなどが行われるビックサイトや幕張メッセがありますよね、あの会場が3つも4つもある感じで、とにかくすごい規模なんです。私は前日のプレスデーから3日間みっちり居ましたが、すべてを見て回ることは到底無理でした。会場内を取材して回っていると、「あなたのテーマは何ですか?どういう興味・分野なの?」と聞かれたのですが、みなさん自分の分野を決めて、重点的に見て回っているようでした。
会期中は数々な展示のほか、世界初の新製品発表、業界リーダーの基調講演などが同時多発的に開催されます。
巨大なカジノホテルのコンベンションルームが発表会場となっています。
日本からラスベガスには、普段は直行便が飛ばないのですが、CESのこの時期だけ、乗り継ぎなしのラスベガス直行便が就航しています。いつもチケットの手配が出発前ギリギリなのですが、運良く年末に残席少ないデルタ航空の直行便を予約できました!
CESの取材にはオンラインによる事前登録が必要で、ラスベガスの各所に設置される交換所でバッジ(入場パス)を取得します。私はラスベガス・マッカラン空港到着ゲートすぐの交換所で無事Pressバッジをゲット。この先4日間、ラスベガスの街のあちこちでこのバッジを下げた人々を見掛けました。
来場者数が10万人とも20万人とも言われるCES。関係者まで含めて会期中にラスベガスの人口が急増します。ひしめき合うカジノホテルが主なアコモデーションとなるわけですが、観光都市ラスベガスには世界中から来場する宿泊客を余裕でおもてなしする施設が揃っているわけですね。もともとニューヨークで始まったCESですが、規模の拡大とともにラスベガスに場所を移したという経緯があります。
ラスベガスのカジノホテルというと豪華な内装や盛大なビュッフェが有名ですが、じつは比較的安く泊まれるんです。私は過去にネバダ州の砂漠で行われる”バーニングマン” に毎年参加してきたのですが、その起点となるラスベガスの隣町、ネバダ州リノではいつもカジノホテルに宿泊していました。リノにも”Circus Circus” や”Golden Nuggets”など、ラスベガスと同じ系列のカジノホテルがあり、だいたい一泊30$から50$程度で、日本人の私には広すぎと感じる部屋に泊まることができるんです。カジノ経営側としては、まずはゆっくり泊まって、カジノで過ごしてもらって、お金を使ってもらって、っていうのが戦略なので、部屋もビュッフェの食事も割安感を持たせてカジノに集客するわけですね。ちなみに、カジノではお酒もタダなんですよ!持ってきてくれたウエイトレスさんに1ドルくらいのチップを渡せばOK。これも酔っ払わせて気が大きくなって、という戦略ですね。
普段は割安で宿泊できるカジノホテルですが、しかしCESの期間においては一泊$250とか$350とか、ここぞとばかりに数倍にレートを釣り上げてきます。このへんもギャンブルの仕組みと同じですね。
Press Day
Pressバッジを手にした私は、一般公開の展示の前日に取材記者に向けた記者会見が行われる、プレスデーから参加しました。
この日は朝から45分刻みで各出展企業のプレスカンファレンスが連続します。一部ソニーなど招待メディアのみの記者会見もあるのですが、プレスであればほとんどのカンファレンスに入場可能。注目を集める企業の会場の前では早い時間から、入場を待つメディアの列が出来ていました。
プレスデーの最後にはヴェネツィアン・ホテルの会場にて、CESの主催団体、米CTA - コンシューマー・テクノロジー・アソシエーションCEO、ゲーリー・シャピロ氏のスピーチに続き、Intel CEOのブライアン・クリザニッチ氏による基調講演が行われました。
ゲーリー・シャピロ氏のスピーチでは、CESの主催団体の名称変更の発表があり、 CEA コンシューマー”エレクトロニクス” アソシエーションから、CTA - コンシューマー”テクノロジー” アソシエーションへと変更するというアナウンスがありました。”CES” コンシューマー・エレクトロニクス・ショー は日本語で言うと消費者”家電” 見本市となるわけですが、”エレクトロニクス”から”テクノロジー” へと名称を変更するにあたり、新しい時代の方向性を示したと言えるでしょう。
Intel の基調講演はヴィジュアル・アーティストのシャンテル・マーティンによる、”HTC Vive” 3D VR(ヴァーチャル・リアリティ)を使ったパフォーマンスから始まりました。
Intel CEOのブライアン・クリザニッチ氏の基調講演スピーチでは ”エクスペリエンス”というキーワードが強調されていました。
同社の基調講演では「スポーツとゲーム」「健康とウェルネス」「クリエイティビティ」という3つの”エクスペリエンス” にテーマを集中し、様々なイニシアティブが発表されました。
様々なIoTデバイスに埋め込むことができるボタンサイズの超小型ウェアラブル・ハードウェアモジュール「キュリー」プロセッサー・センサー・ハブを活用した、様々な事例を紹介していました。
「キュリー」を搭載したウェアラブル・センサーをアスリートが身に付けることにより、スポーツの競技に新しい様々な側面をもたらすというデモンストレーション。審査やスポーツ番組の放送中でも、選手の競技データがリアルタイムに表示される。
AR (拡張現実) を活用した “DAQRI” スマート・ヘルメットのデモ。実際の視覚を認識しながら、ヘッドアップディスプレイにより、修理方法などの追加情報が視覚に表示される。
映画音楽の作曲で知られるインド出身の音楽家、A.R.ラフマーンを迎えたセッション。身に付けたデバイスにより、モーションそのものが楽器となって演奏可能に。
基調講演の最後はA.R.ラフマーンのライブ演奏で閉幕。3000人の観客一人ひとりに、ワイヤレス通信機能が盛り込まれた光るLEDデバイス”PIXMOB”ブレスレットがあらかじめ配布されていて、音楽とイルミネーションがシンクロしていました。A.R.ラフマーンのライブが見れて感激!
Intel といえばパーソナル・コンピューターに入ってるCPUプロセッサーのメーカーというイメージが一般的ですが、CES2016の基調講演ではそのIntel = パソコンというイメージを払拭するように、ゲーム関連以外はパソコンが全く登場しませんでした。そのかわりIoT、ウエアラブル関連の発表がほとんどを占めており、「キュリー」モジュールを中心とした同社の方針が提示されていました。
誰もがセンサーを装備した極小プロセッサーを身に付け、ネットワークに繋がる時代。それをIntelは提唱しているわけですが、実はもっとその先にある、数多くのセンサーデバイスから集約されてくる膨大なデータの世界 = ビッグデータの活用を見越しているんだと思います。いまでこそウエアラブルとして身に付けるデバイスは、近い将来、プロセッサーがより身体に密着してくることでしょう。誰もが「インテル入ってる」状態になる、そんな未来社会を垣間見た基調講演でした。
Intel基調講演のオープニングでVRドローイング・パフォーマンスを披露したシャンテル・マーティン。彼女は一時期、東京で活動していたこともあり、じつは私とは10年来の友人なんです。毎週のように集まっては、みんなで当時私が住んでいた日本橋のフラットの壁面にドローイングを描いたり、一緒にミュージックビデオを製作したこともあるんですよ。
翌日、シャンテル・マーティンと再会して、インタビューできる機会がありました!
「現在のテクノロジーはもっと小脳 (cerebellum) 、もっと頭の中に近づいてきています。特に今年のCESでは、頭に装着する様々なデバイスが展示されていますね。クリエイティブな視点から見て、これはとても良いこと。でも共有することがとても難しくなってきています。例えば私がVRドローイングをしている時、私と同じ体験を持ってもらうには、ヘッドセットをつけていないと難しいですよね。将来はこれがどのように変わっていくのか、とても興味があります。でも必ず、私達の創造性や共感について、より多くの可能性をもたらしてくれるでしょう。」
インタビューの中で、cerebellum(小脳)という言葉が印象的でした。Intelが開発してきたコンピュータのプロセッサーは、よくパソコンの「ブレイン(大脳)」と例えられてきましたが、これからはより小脳に、より感覚器官にダイレクトに働きかけるテクノロジーに進化していくだろうということを、テクノロジーを駆使してきたヴィジュアル・アーティストとしての活動のなかで予見しているようでした。
次回は、CES 2016 の展示会場をリキャップします!